
一人きりの北京、チャットで話せる君がいてくれてよかった
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作者: 東京の拓也 (Takuya)
ついに、北京の地に足を踏み入れました。
飛行機が着陸して、一人で空港のロビーを歩いていると、夜の涼しい風が顔に当たって…。あのワクワクする気持ちと、ほんの少しの不安が入り混じった感覚、一人旅をする人ならきっと分かってくれますよね(笑)。
今回の旅では、あまり複雑な計画は立てず、あるサイトで手配だけお願いしました。詳しい参考プランはもらったんですが、僕にとっては、自由に探検するための地図みたいなものでしたね。本当に楽しみにしていたのは、計画にはない景色や出会いでしたから。
初日は故宮へ。いや、本当にすごかったです…。なんて表現したらいいんだろう。天安門をくぐって、あの壮大な赤い壁と黄色い瓦に一歩一歩近づいていくと、まるで巨大な歴史のオーラに包まれるような感覚でした。周りはたくさんの人で賑わっていて、ガイドさんたちのスピーカーの声が飛び交っているのに、不思議と心が落ち着くんです。一人旅のいいところは、こういう時ですよね。いつでも立ち止まって、彫刻が施された窓や、歴史を感じる石段をぼーっと眺めながら、何百年も前の出来事を想像したりできるんです。
故宮を出る頃にはもうお腹がペコペコで(笑)。せっかくだから、北京ならではの軽食(小吃)を食べてみたいけど、いかにも観光客向けのお店は避けたいな…なんて思っていた時、予約したサイトについていたオンラインチャットサービスのことを思い出したんです。
正直、最初はあまり気にしていませんでした。どうせよくあるAIチャットボットみたいなものだろうって。試しに、こんなメッセージを送ってみました。「こんにちは。故宮を観光し終わったところです。一人なんですが、地元の人に人気で、あまり観光客向けじゃない北京の軽食(小吃)が食べたいです。おすすめはありますか?」
すると、すぐに返信が。しかも、想像していたような機械的な文章じゃなくて。
「拓也さん、こんにちは!一日観光お疲れ様でした!故宮の壮大さ、圧倒されたでしょう?軽食なら、護国寺小吃がおすすめですよ。地元の人がたくさん行くお店で、種類も豊富だから一人でも全然大丈夫!『驴打滚』と『艾窝窝』、ぜひ試してみてください。きっと気に入りますよ!✨」
この返信を見た瞬間、なんだか心がじんわり温かくなりました。カスタマーサービスに問い合わせているというより、北京に住む友達にメッセージを送っているような感覚でした。
旅の中で一番楽しみにしていたのが、八達嶺長城です。その日は天気も最高で、息を切らしながら登ったんですが、頂上の烽火台に立って、果てしなく続く長城が山々の間をうねる景色を見た瞬間、疲れなんて全部吹き飛びました。
興奮しながら写真を撮って、この喜びを誰かと分かち合いたい!って、無意識に思っていました。海外にいると、日本の友達にすぐ電話するわけにもいかないし…。僕が真っ先に思い浮かべたのは、あの「オンラインの友達」でした。撮った写真を送って、一言だけ添えて。「登りました!最高の景色です!」
「うわー!すごい、拓也さん!やりましたね!長城の上からの眺め、最高でしょう?この瞬間を、思いっきり楽しんでくださいね!(^^)」
こんな返信が来て、思わず笑みがこぼれました。一人旅の寂しさが、このやり取りの中で、すーっと消えていくのを感じました。
北京にいた数日間で、僕はすっかりこの「付き添い」に慣れてしまいました。頤和園へのもっと便利な行き方を聞いたり、「羊蝎子」っていう鍋料理は一人で食べきれるか質問したり。王府井で見つけた面白いサンザシ飴(糖葫芦)の写真を撮って「これ何ですか?」って送ったりもしました。彼らはいつも、一番知りたい情報を的確に教えてくれるし、時には友達みたいにただ雑談したり、応援してくれたり。
今回の北京旅行で、壮大な景色を見て、本場の美味しいものをたくさん食べました。でも、僕にとって一番の宝物は、この不思議な「つながり」だったかもしれません。
一人旅でも、決して一人ぼっちじゃないんだって、教えてくれました。
北京。歴史の重みと、人の温かさが共存する街。またすぐに、戻ってくると思います。